家庭科室の甘い味

「先輩、ごめんなさい……」


きっと山川部長やはるかが作った物なら、すごくおいしかっただろう。


私が作ったから、すごく微妙なものを長谷部先輩に食べさせてしまった。


私は落ち込んでしまっていた。


「何が“ごめんなさい”なの?」


暗い表情で謝った私を長谷部先輩は心配そうに見ている。


「だって、これ……」


私は自分が作ったパンを指す。


「このパンは茜ちゃんが一生懸命作ってくれたパンだろ?
だから、茜ちゃんの気持ちがいっぱい詰まってて、俺はすごくおいしいよ?」


と、長谷部先輩は笑顔で、私を見ている。


「でも……」


そんな優しい言葉を長谷部先輩はくれたけど。


おいしくないものは、おいしくない。


「じゃ、これ、全部俺の、ね!」


長谷部先輩は、私の焼いたパンの乗っているお皿を自分の方に寄せる。


そして、本当に長谷部先輩は全部食べてくれた。


そんな長谷部先輩の優しさは、すごく嬉しかった。