「違いますよ」


私は長谷部先輩を見ながら答える。


本当は


先輩目当て、なんですよ?


なんて言えるわけないから、心の中でそう言って。


「そうなんだ。じゃぁ、なんで?」


長谷部先輩は真っ直ぐ私を見つめている。


だけど、目が合った瞬間私は逸らしてしまう。


長谷部先輩に見られている。


そんな事を考えるだけで、私の心臓は煩く動いた。


「料理苦手だから、ちょっとは出来るようになりたいなって……。そっ、それと……食べる事、好きだから……」


一番の理由が言えるわけでもなく。


表向きの理由だけ言う。