家庭科室の甘い味

「あっ、茜ちゃん、待って!一緒に帰ろう?」


“あかね”ちゃん?


私は長谷部先輩に名前で呼ばれたのは初めて。


というか、長谷部先輩が私を呼ぶ事はない。


それに、私が料理部に入部したての頃、自己紹介をして、その時に喋ったくらい。


いつも、山川部長と一緒にいるから喋れない……


というか、私が二人の間に入れなかっただけなんだけど。


私は驚き、長谷部先輩の顔を見上げていると


「あっ、ごめん。菜月がいつも料理部の子の事を“ちゃん”で呼んで話すから、つい……」


長谷部先輩の会話の中に、私の事が出てきたのだ、っていう嬉しさと


“菜月がいつも”


いつもって……


そんなに山川部長といつも話したりするんだ。


それは部活以外でも?


ショツクな気持ちとで、
私の心の中はモヤモヤした気持ちでいっぱいだった。