家庭科室の甘い味

「えっ?」


茜ちゃんは、固まったまま俺を見つめる。


「もう、予備校の前で待ってなくていいから」


そんな茜ちゃんに、俺は念を押す。


でも、


「先輩……、どうして?私が待ってるの迷惑だから?」


俺を見つめる茜ちゃんの目からは涙が溢れ出しそうになっていた。


そんな目で、俺を見ないでくれ。


本当に迷惑だなんて思っていないのだから。


「迷惑なんて思ってない。ただ、遅い時間に茜ちゃんを外で待たすのが嫌なだけだ」


俺が、心配なんだ。


茜ちゃんに何かあったらって思うと……


なのに、


「私……、大丈夫ですよ?」


「今日みたいな事があったら、どうするんだよ!
いや、もっと危ない目に合ったら……。だから、もう来なくていいよ」


茜ちゃんは、何か言いたげだったが、俺は茜ちゃんの家を後にした。