家庭科室の甘い味

「さっきだって、一緒にいただろ？」


長谷部先輩は私の顔は見ずに背けたまま言う。


「えっ？先輩、なんで知って……」


「茜ちゃんと帰ろうと家庭科室に迎えに行ったら、『雨宮と帰った』って言われるし。料理部の子達からは『雨宮と茜ちゃん、最近一緒に居る事多いし、仲いいから怪しい』って聞かされるし……。
それに、さっき帰って来たら、茜ちゃん、雨宮と一緒にいるし……」


長谷部先輩はムッとした感じで言う。


同じクラスだし、仲も良い。


雨宮とはよく喋るけど……


「雨宮は……」


長谷部先輩に誤解されるのは嫌。


「雨宮とは仲いいけど、友達です。
それに今日は私が一人で先輩の家まで行く勇気がなかったから、雨宮はついて来てくれただけです。一緒に帰ったのだって、今日が初めてだし……。それに、雨宮、彼女いるし」


長谷部先輩の腕を掴んで、必死に訴える。