家庭科室の甘い味

「……拓真、危ないんだけど」


はるか先輩はまた野菜を切る手を休める。


「もう少しだけ、このままでいさせて?」


だって今まで、はるか先輩と会う時間は登下校の時間だけ。


帰りに近くの公園で少し話したりする時もあるけど、俺が触れようとすると


「外だから恥ずかしい」


なんて言われて、はるか先輩に触れる事が出来ない。


だから、こうやってはるか先輩に触れていたかったんだ……


ぐぅぅぅ


あっ……


「……プッ、あはははっ!拓真お腹すいてんじゃん!!すぐ作るから待ってて!」


はるか先輩は俺の腕の中から、するりとすり抜けると、再び調理をし始める。


マシで恥ずかしい。


普通、あのタイミングで鳴るか!?


俺は自分の腹の虫にムカつき、そして鳴った事を恥ずかしく思う。


そして、今度は素直にキッチンの側にある椅子に座りはるか先輩を眺めていた。