その時、あたしの前に、小さくて可愛らしい子が走り寄ってきて、


「君、可愛いね。名前なんて言うの?」

「…あたしが?」

「それしか考えられないでしょ。」


それと同時に、可愛らしい子はこう放った。


「俺、輝!岡本輝!!君の名前は?」

「…聖歌。河合聖歌」

「可愛い名前だね。似合ってる!!っつーことで、よろしく!!聖歌!!」

そう言い終わるなり、走り去る男の子。何だったんだろう…

「「…ナンパ?」」

あたしとしぃちゃんは声を揃えて言った。

「…めっちゃかわいかったね」

「…うん」


あの子がうらやましい。
男の子なのにあんなに小さくてあんなに瞳がおっきくて、あんなに髪の毛がふわふわで。


なんて考え事してたら、ホームルームが始まりそうになって、急いで教室に走った。


「えー、今日はこの2のDに新しいクラスメートが増える。岡本、入ってこい」

小柄な男の子が教室に入ってきたとき、あたしは最高潮に緊張してしまっていた。

『岡本』

って単語が妙に引っ掛かって。


黒板にチョークを走らせる音が教室中に響き渡った。