蝉の声が聞こえ始めた頃。
「夏休み遊ぼーよ!」
双子の兄、周が言い出した。
「夏休み?まだ先だろ」
「二週間後だよ」
ふと教室にあるカレンダーを見ると、ちょうど二週間後から夏休みだった。
「何して遊ぶの?」
どこかから帰ってきたであろう双子弟の流が話に入ってきた。
正直言って、夏休みなどに誰かと遊んだことがない。
あ、小さい頃に幼なじみと遊んだんだっけ?
とりあえず小学校に入学してからは一度もない。
別に寂しくなんてなかったからな!
「もちろん僕もだよね?」
背中にずしりと重いものがのる。
「そうだね、奏汰」
奏汰は椅子に座っていた俺にのしかかる。
重いんだけど…。
そんな俺もお構いなしに奏汰は話を続ける。
「どうせなら女の子も遊びたいな!」
そこらへんの話は奏汰達に任せようと、俺は窓の外に目をやる。
俺の席は窓際の一番後ろ。
とてもいい場所だ。
ちなみに奏汰は俺の右斜め前。
双子達は真ん中あたりの席だった気がする。
まぁ今は俺の前の席を占領しているが。
「紫乃ちゃんは?」
俺が1人の世界に入っていると、奏汰が俺の隣の席の子に話しかける。
「私遊びたい!」
紫乃と呼ばれた子が返事をする。
どこかで聞いた声。
俺だって同じクラスの人の声ぐらい覚えてるんだ。
声の主を見ると、
「お前かよ、真」