「…十夜」



落ち着いた流の俺を呼ぶ声で目覚めた。



奏汰はまだ飽きずに周に愚痴っている。


「…何時」



寝起きでかすれた声しか出ない。
その声を聞いて少し笑った後、流は言った。


「もう2限終わった」



俺は耳を疑った。
2限終わった?

そんなはずはない。
俺が寝始めたのは朝のホームルームだ。


ひとしきり考えた後、時計をみる。
というか考えるより時計をみたほうが早い。




…我ながらよく寝た。







「ほんと信じらんない!」



寝ぼけていた頭が一気に目覚めた。
うるさい奏汰の声によって。




「うっせ…」



俺の心の声と誰かの声が被った。

一瞬であたりが凍りつくような声。



流をみたが、流の声ではないようだ。


「…え」


奏汰も相当驚いている。

それもそのはず。



バンッ



机を叩いて勢いよく立ち上がった周。
周こそが先程の声の主であった。