「こんにちわ」
今時、こんにちわって挨拶は珍しいな。
加えていたアイスがとろりと溶けて足に落ちた。

「あっ、わっ。拭くもの、拭くもの…!」
俺は慌てて探そうとする。
「…はい」
目の前の女はハンカチを出した。タオル地ではなく布。レトロというか、何つぅか。
「……ども」
足をサッと拭き、返す。驚いた顔をされた。
「………汚いでしょ、それ。洗って返すか新しいのかを買うべきです。」
睨まれた。

……睨みたいのはこっちだ。
突然家に来て。
他人だし。知らないし。
美人だったし、不思議な雰囲気だったから突っ込み損ねた。
「誰ですか」
「言えばあなたは納得しますか?」
「…返事による」
「では、いいません」
「………」
うぜぇ
「最近の若者はキレやすいのですか?」
「お前ー…」
文句を言おうとしたけどやめた。
嫌味ではなく本当に不思議そうな顔をしていたから。
「…よく言うだろ。自分からなのるべしって」
「そうですね。では名乗ってください。聞いてきたのはあなたからでしょう」
「表札にかいてるだろ」溜息ながらに言ってやる。呆れる。
「そうでした。すいません」
花のように笑う。
…………。
だからどうした。
そいつは家から出た。表札を見るために。
今だッ!