吹き付けるそよ風が寒気を誘う。
ベージュのカーディガンの袖を少し強く握った。
一瞬走った緊張。

こわばった顔であたしは頷いた。
返ってきたのはまたも意味深なねねの返事。


「東海林くんかあ…」

「待ってよ2人とも。
何か知ってるの?東海林一志のこと」


さっきの晴の反応といい、
今のねねの附に落ちない曖昧具合といい、
これは本当に何かあるはず。



「わかってると思うけど、澪。
あの人茶髪だし、いかにもガン飛ばしてるし…」

「まとめちゃうとね、東海林くんって
女付き合い荒いっていう感じじゃん…?」

「ばかねね。
あんたが言うと説得力限りなくゼロだよ」



そんな2人のやり取りをぼんやり見つめる。
きっと今のあたしは口ポカン。


その口ぶりからは聞く必要もなかった。
東海林一志は本当に目立ってるってこと。

だから2人はご存知だったわけで。
無論、晴と怪しい関係にあるんじゃない。


よく考えればそうかもしれない。

この学校に多分あの人以外目立った茶髪なんていない。
それをあたしはいとも単純に片付けてたけど。


なんてカンタンなことに今気付いたんだろ。

もちろん今まであんな人を好きになったことはない。
むしろ前にも後にもありえない。