「美月ちんも人使いが荒いよ。

おかげで目が疲れた」


私は目をこすりながら
涼に愚痴を言った。


「ははは!
お前が言うと本当に聞こえる」


っ!何ですって!?


「どういうことよ!」

「いや、だって、留美は
いつも1人でいろんな
本読んでるからさぁ。

あれ、どんな本なわけ?」

「…小説」


私は顔が熱くなるのを感じ、
照れ隠しのつもりで素っ気なく答えた。


「ふ〜ん。
あ、送る。

もう遅いし」


その時、一瞬で私の胸が
高鳴るのを感じた。

でも、涼の彼女は
サッカー部のマネージャー。

きっとどこかで待ってるはず。

何にも関係のない私が
一緒に帰るわけにもいかない。


「いいよ。
家近いし…

それに、彼女さんと
一緒に帰るんでしょ?」

「…今日は一緒に帰らねぇんだ…」


あれ?…涼?


その時、どうしてか一瞬、
涼の表情が悲しそうに見えた。

いつもとは違う、複雑な表情に……