___2年ちょっと前

その日は7月の終わりで今、通っている高校のオープンスクールだった。

まだここの学校とは決めていなかった。だけど友達が行くと言ったから興味本意で一緒にオープンスクールに行った。

最初は体育館で説明会、吹奏楽部による演奏があった。体育館の舞台には吹奏楽部が待機していた。

この時はまだ知らなかった。運命的な出会いがもう既に近くにあったことを。

しばらくして吹奏楽部の演奏が始まった。

俺はどちらかと言うと音楽は苦手だった。だからあんなに上手に楽器を操る人は凄いと思っていた。

斜め前に5、6人の女の子の集団がいた。1人を覗いてこの後に行われる体験授業を何にするかと話している。

「佳乃っ!佳乃っ」
1人の子が輪の中に入らず前を真剣に見ている女の子に声をかける。

女の子は気づいていないのか、無視しているのか、全く返事をせず前を見ている。

俺はその時からなんとなく気になっていたんだ。

全く気付かない佳乃という女の子にみんなで「佳乃ー」とか「よっしっの!」とかとりあえず名前を呼び続けている。