………寒い。
白い息が出るのは、なんとなく嫌なので、マフラーに顔をうずめた。
本当に寒い…。
紗菜のマンションの前まで来ると、外で雪だるまを作る無邪気な少女を見かけた。
いや~、子供は元気だね。
少女の前を通り過ぎようとしたとき、俺は気付いてしまった。
…あの無邪気な少女は、紗菜だ。
「紗菜」
呼びながら近づくと、紗菜はこっちを向く。
「あれ、野村?どしたのさ」
鼻と頬を真っ赤にしながら、笑顔を俺に向ける。
タタタッ、と駆け寄る姿は、まさに子供。
そして、一人分ぐらい間をあけて俺の前で止まった。
「どーしたの?」
もう一度、笑顔で聞かれた。
こんなに顔あげて…首、痛いだろうに。
俺は軽く微笑んで紗菜の頭に手をのせた。
「ケーキ、食うか」


