「あなた、美しいだなんて所詮は個人の主観でしかないわ。 その人が美しいと思えば、泥にまみれた手も血に汚れた目も美しいの。 だから」 妻は、私の顔を撫でた。 温かい。 久方ぶりに人の温もりに触れた。 「私はあなたの優しい瞳を美しいと思うわ」 私は妻を抱き締めた。 愛しい妻だ。 妻が好きになった。 妻の肌が好きになった。 月に抱かれて眠る妻が好きになった。 私の醜い姿も、妻が好きと言ってくれるから好きになった。 幸せになった。 幸福で満たされた。 私は、醜くはない。