私は伯爵である。 ゆえに世継を作らねばならない。 ある日私に妻ができた。 美しい妻だ。 肌は白く柔らかく、真珠のような瞳は黒が深くて炎のように唇は紅い。 ああ、壊したい。 原型留めることなく壊したいという衝動に駆られた。 けれど、叶わぬ。 私のような者が美しい妻に触れることすら罪になる、と、神が言っている気がした。 神は私が嫌いなのか。 だからこんなに美しい妻を与えたのか。 私は妻が嫌いだ。 家の中ではなるべく妻を避けた。