彼女の瞳は全てを見通してる。確信ではないが若き武将にはその「気」がひしひしと感じられた。だが若き武将はそれを拒む事は無かった。渡りり合うべき戦・収める……


「私はこの世を彷徨う時の使者…人の心を見詰める孤独の者……」


「時を彷徨う?」


彼女はゆっくりと若き武将に近付いて行く。その歩は人の物とは思えないほどたおやかで『気』を全く感じさせない。

「そう、時を旅して人を見詰めるのが私の宿命……その命の行く末を見届けるのが私の務め」

若き武将は笛を収め懐にしまうと、隙の無い足取りで、ゆっくりと間合いを詰める。

「わが名は平経盛の三男、敦盛そなた、名は何と申す?」

若き武将の言葉に女は眼を伏せ答える事は無かった。