そして、


「私が好きなのは英治だよ」


英治の胸に顔を埋めたまま、私の気持ちをはっきり言う。

すると、英治は私の両肩を掴み、私の身体を離し


「佐伯さんの事、今でも好きなんじゃないのかよ」


固い表情でそう言って、私をまっすぐ見つめる。


「専務の事は好きじゃないよ」


もうヘンな誤解はされたくない。

だから、私は英治の目をまっすぐ見つめ、はっきりと言う。


「でも、嫌いで別れたわけじゃないんだろ?」


そんな風に聞いてくるって事は、やっぱり誠司から聞いているんだね。

私と誠司との関係を。

誠司がどう説明したかはわからない。

それなのに、私が誠司との事を黙っていたから、余計に英治は誤解したんだろう……


「専務から聞いたんだね……。昔……、専務が営業課にいた頃、私、専務と付き合っていたの。でも、専務が大阪に転勤してから別れたし、もう昔の話。今は専務の事、なんとも思ってないよ」


私は、もう一度

“誠司の事はなんとも思っていない”

と、はっきり言い切る。

英治の誤解を解きたくて、先に“なんとも思っていない”って事を言ったけど……