今、秘書室には英治と私、二人きり。

社長は誠司を追い払った後、「じゃぁ、お疲れ様」と言って、秘書室から出て行ってしまった。


気まずい空気が流れる中、私はどう話せばいいのか悩む。

さっき“思っている事はちゃんと言う”そう思ったし、気まずいままなのは嫌だから、ちゃんと話そう。

そう思っていたけど……

いざ英治を目の前にすると、上手く言葉にならない。


そんな私に、英治は少しずつ近付いてくる。


どうする?

この1週間、仕事の話はするけれど、英治は電話にも出てくれない。

メールを送っても返してくれない。

英治は怒っているんだよね?

私が隠し事をしている事を……


私が好きなのは英治。

だから、ヘンな誤解をされたくない。

さっきのも、ちゃんと説明しなくちゃいけない。

そう思うのに、やっぱり言葉が出ないんだ。


気が付けば、英治は私の側まで来ていた。

そして、


「知里……、ごめん」

「えっ?」


なんで英治が謝るの?

英治、怒っていたんじゃ……


驚いた私は英治の顔を見る。


「さっき、助けられなくてごめん」


そう言って、英治は辛そうな表情を見せる。

英治の辛そうな表情なんて見たくない。


「そんな表情しないで?私は大丈夫だから」


安心させたくて、私は笑顔でそう言う。

なのに……