3月――…


定年退職をする現専務の代わりに新しい専務が来る。

その新しく来た専務というのは……


「新しく専務になります佐伯誠司です」


俺がこの会社に入社し、営業課にいた時にお世話になった佐伯さんだった。


佐伯さんには、仕事を一から全て教えてもらった。

気配りができ、仕事も出来る佐伯さんに憧れていた。

佐伯さんの秘書は知里が担当する事になるみたいだ。

佐伯さんと知里の話が終わるくらいに


「佐伯さん!お久しぶりです!」


佐伯さんに声を掛ける。


久しぶりに佐伯さんと会えた事に、俺は嬉しさからテンションが上がっていた。


「おう!倉木、久しぶりだな。あれ?ここに居るって事は、お前、今……」


佐伯さんは、営業課にいたはずの俺がこの秘書課にいる事に驚いていた。


「社長の秘書をさせて頂いています」

「そうか!お前ならきっと優秀な秘書なんだろうな。昔から仕事出来たもんなぁ」


笑顔でそう言う佐伯さん。


「いえいえ、僕はまだまだです。いつも園田さんに助けてもらっているので」


佐伯さんと話していると


「佐伯さん、引き継ぎをしたいので、よろしいですか?」


と、現専務が声を掛ける。


「はい、わかりました。じゃぁ、倉木、またメシでも食いに行こうな!」


そう言って現専務の後をついて行く。

そんな佐伯さんの後ろ姿を見ていたら、視線を感じる。

ふと、隣を見てみると、知里が不安そうな表情で俺を見ていた。