「なぁ……」

「ん?」

「知里も俺の事、名前で呼んで?」


あっ、やっぱり?


「えっとぉ……」


今まで、“倉木”って呼んでいたのに、急に名前で呼ぶなんて……


「……なんか恥ずかしい」


俯きながら、小さな声でボソッと言うと、倉木の指が私の顎を掴み、グイッと顔を上げられ


「俺も恥ずかしかったって!なぁ、お願い」


そうだよね……

倉木が照れた所を初めて見れて、“新たな一面が見れた”なんて嬉しがってる場合じゃないんだよね?


だから、私は頑張って


「え、え、えいじ?」


かなり噛んだけど、倉木の顔を見ながら、私は呼んだ。


「まっ、いいか」


倉木はそう言うと優しく微笑み、私にそっとキスをした――…





「あっ、そうだ。クリスマスどうする?」


帰りの車の中。

運転中の倉木が前を見ながら聞いてきた。


「どうするって、仕事じゃないの?」


今年のイブは金曜日。

だから、イブの日はもちろん仕事。

クリスマス当日は土曜日だけど、私達は仕事だろう。

会社は土日休みだが、土曜出勤は、私達はよくある。

だから、私は当然のように仕事だと思っていたけど。