ププッー。


クラクションが鳴ったかと思ったら、私の目の前に一台の車が。


「お待たせ」


車の窓を開け、倉木は他の人には見せる事のない、優しい笑顔を私に向けてくれる。

そんな倉木に私も自然と笑顔になる。

私が助手席に座ると


「じゃぁ、行こうか」


と、倉木は車を走らせた。


着いた場所は、数ヶ月前に出来た、海の近くのアウトレットモール。

駐車場に車を停め、降りると潮の香りが。


「わぁー!ここ、来てみたかったんだぁ!!」


倉木とのデートにすごくワクワクしていた私のテンションは、さらに高くなる。


「ここがオープンした頃、……園田、後輩らと“来たい”って話していただろ?」


そう言えば、このアウトレットモールがオープンした頃。

私は秘書課の後輩達と、このアウトレットモールの話題になり、“行きたいね”と話していた。

だけど、電車で行くのは時間が掛かるし、車を持っていない私は、なかなか行く事が出来なかった。


「うん、聞いていたの?っていうか、覚えていたの?」

「あぁ。まっ、とりあえず、見に行くか」

「うん!」


些細な会話、しかも倉木と話していた事じゃないのに、覚えていてくれた事がすごく嬉しい。