夕方、奥さんが病院に着き、そして、社長の容態を伝え、俺は会社に戻る。

俺が会社に戻れたのは、18時を過ぎていた。


秘書室に戻ると、園田が一人、デスクに肘を付き、頭を抱えていた。

それに……

少し、震えている?


「園田?」


俺が声を掛けると、ハッとしたように


「あっ、倉木。お疲れ様。社長は?」

「さっき会社に戻っている途中に、“社長の意識戻った”って、奥さんから連絡があった」


そう、タクシーに乗り、会社に向かっている途中、社長の奥さんから連絡があったんだ。


「そう、よかった……」


そう言う園田の目は、少し潤んでいるように見えた。


「その……」

「あっ!明日以降の社長の予定は、代理で大丈夫な所は専務が代わりに対応してくれるし、代理が無理な所は予定変更しておいたから」


俺が声を掛けようとすると、それを遮って園田は言う。


「ありがとう。なぁ、園田……、大丈夫か?」

「えっ?大丈夫だよ」


いつもの園田は、仕事でミスをする事は滅多と無いが、おっとりしていて、どこか抜けている。

そんな園田が、今日、社長が倒れた時、慌てる事なくテキパキと指示をし、動いていた。

俺は、頭が真っ白になってどうする事も出来なかったのに。

だけど、やっぱり不安だったんだな……

今だって、“大丈夫”と言っているけど、まだ少し震えている。

そりゃそうだよな。

いきなり目の前で、社長が倒れたのだから。