喫煙ルームでタバコを吸っている時、


「園田さん、また断ったらしい」


男性社員達がそんな話をしているのを、よく耳にする。

その度に、俺はホッとする。

だけど、園田には“好きな人”がいるらしい。

園田は告白を断る時に


「好きな人がいるから」


そう言って断っているらしいのだ。


「園田さんの好きな人って誰なんだろうなぁ」


男性社員達は、よくそんな事を言っている。


俺も知りたいよ。

園田の好きな人……


って、そんな事を考えても、答えが出るわけがない。


隣で書類をぎゅっと抱きしめながら歩く園田。

何も喋らず、俯きながら歩く園田に


「まぁ、どうせ、俺の場合は外見だけだろ?」


話し掛けてみる。


「違うんじゃない?だって、倉木、優しいじゃん。だからじゃないの?」


やっと顔を上げた園田は俺を見る。


「仕事だから、当たり障りのないようにしているだけだよ。無愛想にするわけにもいかないだろ?」

「まぁ、そうだけどさ……」


そう言うと、園田は何か少し考え


「でもさぁ、そんな風に言うけど、やっぱり倉木はいつも優しいよ。だって、私、いつも助けられているし」


まっすぐ前を見て歩きながら言う園田。

園田にそんな風に“優しい”と思われている事は、すごく嬉しい。