「ねぇ、どうしたら信じてもらえるの?」

「えっ?」

「だって、英治……、納得してなさそうな表情しているから……」


誠司が転勤してきた時、誠司の事を聞かれたのに、黙っていたのは私なんだけど……

どうすれば、英治に信じてもらえるかわからず、私は英治を見つめる。


「この間の歓送迎会の後、家に泊まっただろ?」


静かに話し出す英治の言葉に頷く。


「知里、寝言で“せいじ”って言ったんだ。“せいじのバカ”って……」


えっ?

寝言で誠司の名前を言っていたの?


その事実に驚き、固まる私に


「俺、その日に佐伯さんから、知里と付き合っていた事を聞いて……。その後、知里の寝言だろ?
だから、もしかして知里は佐伯さんの事を今でも……」

「それは絶対にない!」


私は英治の腕を掴み、目を見てはっきり言う。


「今も専務の事を好きだなんて、絶対にない。私が好きなのは英治だよ」

「じゃぁ、どうして……」

「寝言だよね?多分……、その日、専務と別れる事になった原因の日の夢を見たから」

「夢?」

「うん、夢……。久しぶりに専務に会って、昔の事を思い出したりしたから。だから、そんな夢を見たのかな?専務の夢を見たけど、だからって、今も専務に気持ちがあるって事は絶対にない。別れた原因も原因だし、また専務を好きになるなんて、有り得ないから」


“誠司の夢を見た”なんて言ったら、また誤解されるかもしれない。

私は英治の目を見ながら、誤解されないように話す。