… とりあえず今
目の前に拡がっている惨状を説明すると
真ん中の棚やショーケースの中身
多分、ヒジから手の平にかけて
一度に薙ぎ払って落とされた感じで
―― 同じく両脇のワンピースやスカートも
ハンガーごと、床にばらまかれている
本当なら速攻で
アドリアナを怒鳴りつける所だけど
――― それをしなかったのは
俺達の前に立った遠山さんが
後ろに廻していた手を振って
こちらを見ずに制止したから
アドリアナは粗い息で
遠山さんに食ってかかる
「 ―― 何なのその態度!!!
私はここの服を気に入ったから
店の中の物全部、端から端まで
買ってやるって言ったのよ?!
お金ならあそこにいる男が払うわ!!
… それなのにダメってなんなの?! 」
…… おいおい
「 … ですから
先ほども申し上げた通り
ここの品物は、
まだ無名ではありますが
デサイナーを夢見る人達が作った
それぞれ一点物のお洋服なんです 」
「 ―― その店も持たない
半人前の作品を気に入ったって
こっちは有り難くも言ってるわけ!! 」
瞬間
横を突き抜ける様に
飛び出して行った長い髪が
綺麗な爪を振り上げて
全身の力を込め、
思い切りアドリアナを叩いた


