日はまだ、充分に高い
二階の窓から入って来ていた桜は
道路を隔てた向こう
ビルとビルの隙間から
淡い色の並木が見える
ゆっくり歩いていると
かなり不服そうで不安げな
細いヒールの音がついて来た
その時、
何故 手を差し出さなかったのかは
自分でもわかってる
――… アズがどう思っていようが
俺は女と手を繋いで歩いたのは
あいつが初めてで
… 自分にこんな処女性っていうか
言い方わかんねえけど
アズに取っても繋ぐ手が
とても大切なのは判っていたし
だから
立ち止まり、少しだけ振り向いて
脇腹とヒジの間を、開いた


