俺達が立っているのは歩道
アズ越しに見えるのは、
光の瞬くビルと、スクランブル交差点
信号が青に
人の波の殆どは、渋谷駅へ流れる
靴音がうるさいはずなのに
… 俺の耳が
アズの声に集中しているせいなのか
やけにそれらが遠くに聞こえた
――― 何処かから
たくさんの、桜の花びら
「 ――… マンハッタンで
私が持ってたクマ、いるでしょう? 」
「 …… うん 」
「 あの子も
同じ形、同じ色の子
いっぱいね 並んでたんだよ
――― でもね
あの子がよかったの
どーしてもだよ? 」
「 …………… 」
「 クウヤの指輪だってそうだよ
… クウヤは指輪とか、あまり着けなくて
でもあのニューイヤーの中
通り、歩いててね?
クローズしてた
小さなアクセサリー屋さんの前で
クウヤがショーウインドーに
べったり手をつけて…
呆然に近い顔で、ずっと見てたの
でもお休み期間が続くし
それからクウヤは
日本に戻っちゃったから…
明けてからすぐに
その指輪、買いに行って 」
「 ―― じゃあ
池上の枕は、どうなんのよ? 」
笑いながら言う


