一瞬
軽く誘導して、今アズがどこにいるのか
" 綺麗な月だな
ちょっと、建物と一緒に写してみてよ "
そんな返信をしようかとも考えた
だけどメールは開かず
ただひたすら、鳴らし続ける
プツ とノイズが入って
今 真横で
ゲラゲラ笑う少女達の会話が
電話の向こうからも、同じ様に聞こえた
「 ―――― アズ… 」
月を挟み、歩道橋の 端と端
携帯から耳を離して
キョロキョロと
辺りを見回す黒いキャップ
上はパーカー、下はジーンズにブーツ
ドロップ型のサングラスが
こちらに気付いて、
桜色の唇を 大きく 開く


