「 あ あっちか 」
真木は一瞬
自分のスーツのポケットを探っていたが
髪を両手でかきあげながら
「 青山からだ 」と
部屋を出ようとする
――― 腕を掴んで止めた
「 …? なんだ?
オイ、切れちまうだろうが 」
「 ―… 青山抜きで
話、進めるのはやめろよ… 」
「 話すに決まってんだろ
当面は、婚約だけだっていい
―――― とにかく離せ 」
留守電になったのか、携帯の音が止む
しかしすぐにまた
同じメロディが鳴り出して
それが二回、三回と続いた
「 ―― 珍しくしつけえな
なんかあったか…? 」
その台詞に、俺は腕を離し
ツカツカと部屋を出ていく
真木の横顔を見送った
「 … 岡田クン
やっぱり随分変わったよね 」
後ろから、ハルトの声 ――――


