コンコン


「どうぞ」

中から声が聞こえた。


朔夜先生がいる部屋に入った。


「失礼します」

「ああ、菖蒲さんですか」


ニッコリと笑いかけてきた。
女の人はこの笑顔で倒れそう。私は倒れないけど


「今日も見舞いに来たんですか」

「はい。冬華のことで聞きたいことがありましたからここに来たんです」

「そうですか」

部屋には私と彼しかいない。
いや、今まで看護士さんがいたけど部屋を出ていってしまった。

「……あの子は」

「あと一年ぐらいしか生きられないだろうな」

朔夜先生の口調が変わった。


これが本来の彼。

知ったのは結構前になる。

「…そう、ですか。冬華には」

「まだ言ってない」


まだ言ってないことに安堵した。