「なぜ人間がいる」

えっ? あなたも人でしょ?


「答えろ」

「…夜の散歩をしてただけだよ」


嘘は付いてない。


「こんなところに人間は来ない。お前…」

「ねぇ、あなたも人間じゃないの?」


彼の言葉を遮った。


気になっていたから、聞いてみた。


「違う。俺は…ここの守り人だ」


彼は表情を変えない。何も映さない




その瞳に。



「よくわからないけど、ずっとここにいるんだね」

「……」

無言は肯定でいいのかな。


「ねぇ、あなたの名前は?」

「……」

「私は冬華。あなたは?」

「………結音」

「ゆう…と… 綺麗な名前ね」

「……っ」


初めて彼の表情が変わった気がする。でもそれは一瞬だけ。


そろそろ行かないと、ばれちゃうかな。


「そろそろいくね。またね」