「ひゃー。いい湯だった」


定番の言葉でふろをあがって、だれもいないはずの廊下に出る。



「おそい」


「あっ…」


待ちわびた、と立ち上がった。


ふろ上がりのはずの伸は寒そうだった。



「え、待っててくれたの。寒くない?」


「寒い…」


伸は腕を暖めるようにさすった。



「えと…もう1度、おふろに入ったら?」


「いっしょに入るか?」


「え…」



熱い体がさらに熱くなる。


そんなあたしを笑って、手をつないだ。




「いいよ、だいじょうぶ。部屋、行こうぜ」



2人きりの部屋。


そう意識して、またあたしは熱くなる。




そんなの、2人で家に暮らしているんだから、慣れているはずなのに。