伸と綾香さんのお金持ちの特権を使って、貸切にしてしまった温泉宿。



ここは、隠れ湯とかいうけっこう有名な場所らしい。




伸と綾香さんがサプライズという形であたしと梓先輩を驚かせた。



綾香さんは、いたずらが大好きだもんね。








あたしと伸は今、木の素材でできた、右手から鯉が見える廊下をぺたぺたと歩いている。


すごいすごいとあたしは感動しながら、すべるように進んで行く。




足取りは軽くて、鼻歌交じりのごきげんなあたし。


後ろからゆっくりと伸がついてくる。




「ごきげんだな」


「うんっ。だってこんなところだし、綾香さんたちといっしょだし…」



久しぶりに綾香さんたちと会って、さっきなんてなれそめを聞けて。


高校時代に戻ったみたい。




「俺といっしょにいれるからとかじゃねぇの?」


となりにならんで、笑顔でこっちを見た。