甘い罠

その日杉山は、煙草を吸いに非常階段へ出たという

オフィス内は禁煙化が進んでいて、喫煙所が設けられている1階か3階まで行かないと、社内では煙草が吸えなくなっていた

杉山は、1日2箱は無くなってしまうヘビースモーカーだった

喫煙所まで出向くのが億劫で、缶コーヒーの空き缶を片手に、よく非常階段の踊場で一服していたらしい

非常階段は、外から見えないように階段に沿って、厚手のシートのようなもので被われている

でもその日は、昨晩からの雨が吹き込んで、階段も踊場も濡れていた


「警察の人が、色んな課に事情聴取に回ってた

突き落とされた可能性もあるって…
てゆうかまだそう睨んでる警察もいるみたい

だって煙草吸う時って普通ジッとしてるじゃない?

でも私はすぐ思ったの


杉山ね、最近よく、運動不足でお腹が出てきたってボヤいてたのよ
だから極力エレベーターとかエスカレーターは使わず、階段を使うようにしてるんだ。って…」

「あぁ…」

そこまで聞いて、碧が言わんとしていることがなんとなく瑠璃にも分かるような気がした

階段の上り下りでもしていたのだろうか?

でも誰も見ていなければ、断定は出来ない