甘い罠

「木村さんが来る前に、ちょっと瑠璃に話しておかなきゃならないことがあるの」

ずっと一点を見つめていた碧が、瑠璃の方を見た


ほらきた。
と瑠璃は瞬時に思った
何かあるような気がしていたのだ


「うん、なぁに?
木村さんてどういう人なの?」

瑠璃は頬杖をつき、あえて笑顔を作って碧を見た

「あ、違うの
木村さんはいい人なのよ?
うん、すごくいい人」

瑠璃が何か勘違いしたらいけないといった風に、碧は早口で言った

「あ、やだごめんね~(笑)
私ってば木村さんのこと全然話してなかったよね(笑)
今日はそれがメインだっつーの」
 
碧は自分で自分に突っ込み笑う

瑠璃は笑えなかった

「木村さんて営業なんだけど、外回りが多いからほら、外出する時とかよく見かけてね
挨拶したり伝言伝えたりとかしてる内に、色々話すようになって親しくなったんだけど

あ、33歳なんだけど、すっごく落ち着いてて、仕事も出来るみたい。
他の営業の人が、次期課長候補は木村さんだろうって噂してたの聞いたことあるの。

ね?
悪くないでしょ?」

碧の喋り方が、必死に何かをフォローしているように瑠璃には見えた

確かに木村さんは悪くないと瑠璃も思ったが、さっき「話しておかなきゃならないことがある」と言った碧の思い詰めた顔を思い返すと、あまりテンションが上がらなかった

本題は全然違うところにある
瑠璃はそう感じていた