甘い罠

「杉山さん…」と言いかけて黙ってしまった瑠璃を、碧はチラッと見た

「あぁ、杉山とはもう終わったの

終わったって言い方が妥当か分からないけど…」

そう言うと碧は、腕時計に目をやった

碧の華奢な腕には、カルティエの時計が光っている
恐らくこれも、杉山さんにプレゼントされた物だろうと瑠璃は思った

「あ、そうなんだ」

雰囲気的に、深く聞かない方がいいような気がして、瑠璃は「ふぅん」と意味もなく何度も頷いた

「木村さんにはね、8時半に待ち合わせって言ってあるの」

突然碧は言った

「え?

あ、そうなの?」

一瞬何のことかと瑠璃は思った

さっき、バスの中にいる時に届いたメールでは、木村さんは仕事で遅れると碧は言っていた

瑠璃との待ち合わせは7時半

どういうことだろうと瑠璃は怪訝に思った