記憶の向こう側





勇樹は不意に私の方に振り返った。




「服が足りなくなってな…。ちょっと取りに来た。」



「そう…ですか。」




何か緊張する…。



私、この部屋をキレイに使えてるよね…?




不意打ちの点検を受けている気分だった。




すると勇樹は、ジロリと私を軽くにらんだ。




「…っつーか、その変な敬語、やめろって。前から思ってたけど。」



「え…、あ…、はい。」




ヤバイ…



緊張し過ぎてついまた敬語が…!




もちろんそんな私の言葉は、勇樹によって訂正させられた。




「『はい』じゃなくて、『うん』。」



「う…、うん。」



「よし。」





満足した勇樹は、自分の服の物色を始めた。




次々に服を大きなスポーツバッグに入れていく。