記憶の向こう側




そのお客さんの叫びが聞こえてきた途端




私は自分の痛みなど忘れて、お客さんに向き直った。




「す…っ、すみません!お身体は大丈夫ですか!?」




見てみると、私の持っていた熱々できたての料理が、中年男性のお客さんの膝の上にひっくり返っていた。




私はすぐに膝に乗った料理を払った。




でも…お客さんの服にまで、料理の染みが広がり始めていた。