記憶の向こう側





だけど、顔が晴れない私に、山下敬太さんは満面の笑みを向けてきた。




「杏子、やっと見つけた。」




え…


まだ私、記憶も戻ってないのに…。




戸惑う私の横から、勇樹が山下敬太さんにキツイ視線を向けた。




「待てよ。連れて帰る気か?」



「いや…、あの、もちろんあなたが杏子の今の彼氏だということは知っていますし…」




今にも怒り出しそうな勇樹を見て、山下敬太さんは必死に否定した。




「あんたの幼なじみかもしれないけど、連れて帰ることだけは…」



「私も、勇樹のそばにいたい」




私が会話に割って入ったことで、山下敬太さんは諦めたようだった。