記憶の向こう側





「コロ…。」





それは、杏子さんが家の玄関の前で、一匹の犬と笑顔で写っている写真。




「コロを、ご存知なのですね?」




その写真に集中していた私に、山下敬太さんは声を掛けてきた。




「でも『コロ』という名前しか…」




私は何となく自信がなくなりそうになって、下を向いた。




「杏子はコロを、小さい頃から可愛がっていました。でも杏子がいなくなる直前、コロも急にいなくなって…。田島さんがコロを知っているということは…、やっぱり杏子なんじゃ…」



「その可能性は高いな。」




山下敬太さんの話を聞いて、勇樹は少し納得したようだ。