記憶の向こう側





「勇樹!」




勇樹は何やら作業していたけど、振り返って笑顔で応えてくれた。




「おう、叶恵。珍しいな。」



「うん。仕事はどう?」



「もうすぐ終わる。…と、そちらの方は?」




勇樹は、私の隣に立っている見慣れない男性の方を見た。




「あ、山下敬太と申します。」




勇樹の視線に気が付いて、山下敬太さんは慌てて勇樹にお辞儀をした。




「だいぶ前だけど、病院で…ほら、私を幼なじみって言ってた…」




そこまで私が言って、ようやく勇樹は思い出したようだった。




「ああ。あなたが。」



「すみません、どうしても田島さんとお話がしたくて…」




今度は勇樹の視線が私に移った。




「俺がいてもいいのか?」



「うん。私が不安だから…。勇樹にもいてほしいの。」



「おう、いいぜ。ちょっと待ってろ。」