記憶の向こう側





同僚に呼ばれてフロントまで来てみると…





「田島さん、山下です。覚えてますか?」



「あ…こんにちは。病院の時の…」




びっくりした…。


予感はしてたけど、本当に現れるなんて。




「はい。あの時はお騒がせしました。またあの病院に行って、例の看護師さんに会って、ここを教えてもらったんです。…出過ぎた真似だとは思ったのですが…。」




私は咳払い一つして、冷静さを保ちながら言った。




「ご用件は…?」




すると、山下敬太さんはニコリとしながらこう言った。




「少しお話できませんか?」




私の過去のこと…?


「杏子」さんのこと…?




そうでないにしろ、話の内容を聞くまでは邪険にできない。




「え…、はい。仕事が終わってからなら…。」




私はしどろもどろで答えた。




すると山下敬太さんは、またニコリとしながら言った。




「分かりました。ここで待ってます。」