「幼なじみかもしれない男かぁ…。…ほんとに、心当たりは?」
「あったらもっと驚いてる。」
私の言葉に、勇樹は少し考え込んだ。
「…だよな。…叶恵は?やっぱり、過去の自分の記憶を戻したいと思う?」
「戻れる兆しがあれば…かな。」
「まあ、あんまり深く考えるなよ。叶恵には笑顔でいてほしいしな。」
勇樹は私の頭を優しくなでてくれた。
「うん。」
私は勇樹に、精一杯の笑顔を向けた。
それから1か月、何も変わることなく過ぎていき…
いつものように旅館で接客をしていた、ある日の昼下がり。
「彼」はまた、私の前に現れた。

