記憶の向こう側





「本当かしら…?」




山下敬太さんを見送った後、梓さんは腕組みしながら口を開いた。




「え…?」



「彼。もし本当に、叶恵ちゃんが彼の幼なじみだとしたら…って思って。…どう?ピンとこない?」



「すみません、全然…。」




何か気付いてたら、今頃違う方向に行ってるよ…。




私の言葉を聞いて、梓さんは天を仰いだ。




「そっかぁ。…彼、また来るかもしれないわね。」



「そうですね…。」




そう


山下敬太さんだって、これだけ「杏子」さんに似ているという私を放ってはおかないだろう。




「もししつこくて嫌になったら、いつでも相談にいらっしゃいね!」



「はい。」




私は梓さんの存在を心強く感じながら、家に帰った。





そして私は、勇樹に今日の出来事を話した。