記憶の向こう側





「…あ、いえ…。…そうですよね。こんなに美人なら、彼氏の一人ぐらい、いますよね。」



「彼のおかげで独りぼっちの叶恵ちゃんは救われたからね。…何?タイプだったの?」




梓さんが意地悪にそう言うと、山下敬太さんは全力で首を横に振った。




「いえ!そんな、とんでもない!」



「新手のナンパじゃ…」




梓さん、まだ食いついてる…。




「絶対、違います!」



「…じゃ、いいけど。」



「すみません、俺はこれで…。お騒がせして、本当にすみませんでした。」




梓さんの口撃がかなり効いたのか、山下敬太さんは慌てて部屋を出ようとした。




「そうね。私の大事な叶恵ちゃんに、下手に手を出したら許さないわよ。」



「だから、違いますって。」




もうかなりタジタジの山下敬太さんは、苦笑いしながら帰っていった。