記憶の向こう側





男達がいなくなった後、勇樹は急に優しい微笑みになった。




「ごめんな、叶恵。遅くなった。」



「勇樹…。すごい濡れてるよ?」



「俺は大丈夫。…はい、スポーツドリンク。」



「ありがとう。」




手渡されたペットボトルは、雨に濡れていた。




「あそこの売店、スポーツドリンク売り切れててな、探してたら、時間かかっちまった。」




うそ…


雨の中、走り回ってたの?




「なかったら何でも良かったのに…。勇樹が風邪ひいたら、私…。」



「俺は風邪なんてひかねぇよ。…ほら、外、見てみ?」



「え…」




そう言われて、窓から外を見ると…




雨は止み、空は少しずつ明るくなり始め、雲の切れ間から太陽の光が差し込んできた。




「あ…!虹だよ、勇樹。」



「ほんとだ。通り雨だったんだな。」





しばらく消えそうな虹を見て…




「叶恵、次、あれ乗ろう。」



と、勇樹は観覧車を指差した。




「うん!」




私達は手をつないで、雨上がりの遊園地を、観覧車の方へと歩き出した。