記憶の向こう側





近くの売店までそんなに離れてないはずなのに、勇樹の帰りが遅い。




「寒…。」




冷たい風が吹き始めて、私は近くの建物に避難した。




窓から勇樹を探すけど、見つからない。






あれから30分は経ったと思う。




ついに雨が降り始めた。



勇樹はまだ見当たらない。




「勇樹ぃ…。」




不安になった私は、勇樹の携帯に電話をかけるけど…




『お客様のお掛けになった電話番号は…』




虚しい機械的な応答が聞こえた。





まだ辺りは暗くて、雨はしばらく止みそうにない。





「どうしよう…」