記憶の向こう側





久々にガッツリ仕事をして、帰宅が大幅に予定より遅れてしまった。




私はそっと、アパートの部屋の扉を開けた。




「お帰り。」




すると、いつもこの時間に寝てるはずの勇樹が、起きて待ってくれていた。




「勇樹!待ってたの?」



「おう。明日は休みだからな。叶恵、遅くまで大変だな。」



「大丈夫!まだ初日だし。」



「昼食届けた時、女将さんに会ったんだ。叶恵が帰ってくるって、嬉しそうだったぞ。」



「ほんと…?」




女将さんが、そんなことを…?




「叶恵が必要とされてて、何か俺も嬉しい。」



「へへ。」




勇樹にまでそう言われると…、何か照れる。




「今度の休みは?」



「来週末かな…。とりあえず慣れるまでは、短い時間でも仕事は入れてるから。」



「そっか、じゃあ次の休みは遊園地デートな!」




やった!

こんなに早く遊園地に行けるなんて思わなかったよ。


それまで頑張らなきゃ。




「うん!楽しみ。」



「それまでお互い仕事だけど、頑張ろうな。」



「うん、そうだね。」



「俺は眠いからもう寝るけど…、できるだけ早く寝ろよ。」



「うん、おやすみなさい。」



「おう。」





勇樹も疲れて眠たいはずなのに、待ってくれていたのが嬉しい。




私を一目見ようとしてくれたのが嬉しい。





明日も頑張ろう。



少しずつ働いて、次の休みまでに仕事に自信をつけよう。




早く、勇樹に見合う彼女になりたいから…。