記憶の向こう側






「田島です。長い休暇ありがとうございました。気持ちを一新に、また頑張りますのでよろしくお願いします。」




宴会の準備前、私は先輩仲居さん達の前で深々と頭を下げて挨拶した。




旅館復帰第一弾の仕事は、他県からのツアー客の宴会。




最初は渋い顔して迎えてくれた先輩もいたけど、今度は前と違って気合い入れて働いているおかげで、むしろ前よりもお小言が減ったように感じる。




いい再スタートを切れたと思う。





そして…




上手く宴会が終わり、片付けが終わって休憩部屋に戻った時、ホッと肩をなでおろした。




その時、女将さんが近付いてきた。




「叶恵ちゃん。なかなか良かったわよ。久々にしては上出来!」




女将さんは満面の笑みを向けてくれた。




「ありがとうございます。」



「前の叶恵ちゃんとは表情が違うから、びっくりしちゃったわ。このまま頑張ってね。」



「はい!」





その後女将さんと話して、前より仕事の時間を減らしてもらった。




気持ちに余裕を持ちたいのと、勇樹の側に少しでもいたいから。




勇樹も稼いでるから、がっついて稼ぐ必要もそれほどなくなった。